銀座線新橋駅Summer Massacre

AM 7:30のアラーム

毎週日曜の夜は眠れないので大体睡眠時間は2時間ほど

 

今日の天気は晴れ、最高気温は38度らしい。

髪を流してタオルで拭いてヘアオイルを馴染ませる。

家を出て、朝とはいえ晴天で温まった空気の中で少し濡れた髪を乾かす。

中くらいの価格帯のヘアオイルの香りがふわっと香る。

 

むせかえる暑さの住宅街を抜け、冷気が漏れるJRの駅へ足早に入って電車に乗る。

目指すは赤坂。

東京上野ライン籠原行きは同じく通勤の学生社会人でごった返していて、ぎゅうぎゅうになりながらカロリーメイト食べ、片手間にKindleでよふかしのうたを読んだ。

最新刊の展開がすごく綺麗でよかった。

 

新橋駅について銀座線渋谷行きに乗り換え。

 

電車を降りると、真横を上野へ向かう新幹線が通り過ぎていった。

人の川が階下へと水のように流れ、水は改札で枝分かれし、銀座線丸の内線を目指して下へ下へと流れていく。

銀座線のホームは電車の熱と通勤電車に揉まれたスーツの戦士たちの熱で、ホームそのものが小籠包のせいろのようであった。

 

 

 

ホームが臭すぎる

 

 

 

あまりに臭い。改札ですでに臭い。納豆を山ほど食べて歯を磨かなかった朝みたいな臭さと、はちゃめちゃに朝練を頑張った高校サッカー部が全員制汗シートを忘れた部室みたいな臭いがする。

 

駅のエアコンはそんな納豆大好きサッカー部を吸い込んでは吐き出す、吸っては吐く、また吸っては吐く。

 

生物濃縮を知っているだろうか。

野生動物が毒を取り込んでそれを上位の捕食動物が食し、それを何度も繰り返して猛毒をつくりだす。有名な例だと野生のフグや牡蠣がそれに当たる。

 

新橋駅のエアコンは東京湾の生牡蠣になった。

猛毒を抱えたスティンクBボーイ。

気が効く彼らはサービス精神旺盛にその冷たい吐息を永遠吐き出してくれる。

もうやめてください熱波で死んだ方がマシだよ。

 

やばすぎる銀座線新橋駅のホームから銀座線渋谷行きの電車にやっとこさ逃げ込めた。

俺は鼻で息をすることを許された。

 

 

いや電車も臭すぎる

 

 

電車の中にも納豆サッカー部がいた。しかもホームの比じゃない。銀座線の中でインターハイが行われている。

それだけで終わればよかった。

 

私の身長は165センチである。

同年の男性からすると低めの身長、吊り革には手が届く。大体おっさんの平均が気持ち170センチくらいなのでおっさんの肩か肩甲骨の辺りに頭があることになる。

 

勘の良い方は気づくかもしれない。

満員電車、吊り革に捕まるだけでぎゅうぎゅうの車内、エアコンではインターハイが行われていて、周りのおっさんの平均身長は170センチ。

 

銀座線渋谷行き、納豆高校サッカー部3年生最後のインターハイ、青春のど真ん中、その生の熱気をおっさんの上半身から私の眼前へ直にお届け。DAZNを超えるリアリティをご照覧あれ。

殺してください。

 

新橋駅から赤坂見附駅まで3駅、時間にして約10分、本物の地獄がそこにあった。

10分後、私は地下の激臭小籠包せいろから釈放された。気分はショーシャンク刑務所のティムロビンス、大手を振って電車から脱獄。この際下水を泳いだ方がミジンコ2匹分ほどマシだっただろう。

 

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ティムロビンス「くっさ」

 

ただ私は釈放されたのだ。もうこんな地獄には来ない、このまま会社へスキップしながら豆乳飲んでいくのだ。

 

赤坂は青空が広がり、照り返すような日差しがビルのガラスに反射して容赦なく突き刺さる。

しかし彼の心は予定のない土曜の朝のように透き通っていた。

 

この時の彼は知る由もない。

隣のデスクにワキガ大魔神がふんぞりかえって周囲2mを彼の王国に変えてしまうことに。